ドバイここだけの話

2023年4月からストックホルムに滞在中。ドバイ情報だけでなく現地情報や世界を移動する楽しさ、苦労についても書こうと思っています。

私が海外移住した理由~在住歴20年以上、10か国以上住んでみて思うこと

最近、ドバイへ移住を考えている日本人を見かけたり、相談をいただいたりする。ドバイに住んでいた以上、ドバイに興味をもってもらえるだけでうれしいし、チャンスがあるならぜひ住んでもらいたいと思う。

ただ、初めて海外移住をする場合いろいろ不安なこともあるだろう。生活はしやすいのかとか、うまくやっていけるのだろうか、とか。海外移住はコツを覚えてしまえば、どこに住んでもそれなりに暮らしていけると思っている。実際、私は10か国以上暮らしてきたが、どこに住んでも基本は同じだからだ。

海外移住についていろいろ考えている人たちに向けて、私が経験したことをここに書くことで少しでも役に立てるといいなと思っている。

 

 

 

私の移住のきっかけ

海外移住のきっかけはひとそれぞれだと思うが、私の場合は、ずばり「結婚」だった。

もちろん学生の頃から外国人留学生のサポートをしたり、卒業旅行では異文化体験はとても面白いと思うようになり、仕事をするようになっても休暇になると海外旅行へと出かけ、英会話に通ったりもした。当時は、結婚なんて興味はなかったので、自分でわけもなく勝手に30歳までには海外に住むぞと思っていたほどだ。

ところが、アラサーの頃、偶然今のスウェーデン人の夫と出会い、あっという間に結婚してしまった。結婚とは勢い、というが、まさに結婚できたのはその勢いだったのだろうが、それが世界を飛び回る長い長い旅のはじまりだったとは思ってもみなかった。

私の移住状況

国際結婚の場合、日本で結婚すれば日本に住むことが多いし、留学やワーホリなら現地で知り合って結婚・移住するというパターンが多いように思う。しかし、私の場合は、日本でもスウェーデンでもない第3国に住みながら、スウェーデンの永住ビザを取得しつつ生活基盤もあるので「スウェーデンに移住している」ともいえるが、実際はほとんど住んでいない。スウェーデンに帰るのは、休暇の時や仕事と仕事の間くらいだ。

駐在ではなく、夫が仕事のオファーをいろいろなところから受けるため、それに帯同しているので、移住先は「世界のどこか」ということになる。とはいえ、海外移住していることには違いない。あるいは私と同じ国際結婚をした友人の中には、例えばフランス人の男性と結婚している日本人女性は、夫のフランスのビザは持たずにタイに住んでいるとか、フランス人とメキシコ人のカップルは、スペインに生活基盤を持ち、住んでいるのはドバイ、という人もいる。

最初の移住

私の場合、日本で結婚したら日本に住めるだろうと思っていたのに、結婚したらいきなり夫がモルディブに行くと言い出した。いくら海外移住したいと思っていたとはいえ、モルディブなんて誰が想像できるのか!?

当時はまだネットが発達していなかったので、ネットで情報を集めることすらできなかったが、どうやらハネムーナーには人気の国というのはわかった。だからといって、私たちは新婚旅行で行くわけではない(もちろんその当時は新婚だったわけだが)。

おそらく多くの人は、たとえばイギリスならわかるけど辺境なんてとんでもないと思うかしれない。ドバイですら、今でも治安が良くないしイスラム国だというので行くのをためらっている人もいるくらいなのだから(現実的には治安は日本より良く、イスラム国でも戒律は緩い)住んだことがなければ見当がつかないのは当然だ。最初は、どうしても行きたくないとごねてみたが、どうしてもついてきてほしいという夫を断ることができず、引越しを決意したのだ。

旅行は天国、住めば地獄

さて、モルディブとはどんなところだったのか。

観光で来る人たちは口をそろえて、こんなところに住めるなんてステキですね~というのだが、だれも現地生活を想像できる人はいない。今だから正直に言うが、私にとってモルディブは「旅行は天国、住めば地獄」だった。

もちろん美しいインド洋に囲まれ、水平線から見る夕日は壮大で、不自由を感じない至れり尽くせりの豪華ホテルに住めれば文句はないかもしれない。しかし、実像は全く違う。日本より50年ほど遅れたようなさびれたところで、多くの小さな島から成り立っているため1kmほどの島に缶詰めになって生活しなくてはならない。Wifiもなければ、レストランもカフェもショップもなにもなく、ひたすら海に囲まれた質素な暮らしがあるだけだった。おまけに、島と島の移動は今にも沈みそうなボートで移動せねばならず、あるときは桟橋を踏み外して海に落ちたり、部屋でシャワーを浴びている途中に停電になってシャンプーだらけのまま遭難・・・なんてこともあった。あまりに日本と違いすぎて荷物をまとめて日本へ帰ろうかと思ったし、ホームシックにもかかった。

もちろんそういう辺境がだめということではなく、当時の私にとっては過酷だったという意味だ。

しかし、今から思えば、私の長い海外生活の中でモルディブ体験があったからこそ、今の私の海外生活があることはたしかだ。

最初の移住で学んだこと

まず、モルディブに住み始めたころは、よく日本だったらこんな風なのに、日本だったらこんなはずないのに・・・・と、日本とモルディブを比べてばかりいた。

そりゃ日本からいきなりモルディブに来たのだからそうなるのは当然だ。比べるところが日本しかないし、日本しか知らないからだ。それに、いくら海外旅行好きとはいえ、旅行と移住は全然話が違う。旅行は非日常、家に帰れば心地よい暮らしが戻るが、住むとなると不便なことも悲惨なことも全部受け入れて生活しなければならないのだからおいしいとこ取りというわけにはいかない。

 

じゃあ日本とモルディブを比べたら、現実は変わるのか?

そんなはずはない。住んでいるところはモルディブなのに、日本のようになるわけがない。現実が変わらないなら自分が変わるしかないのだ。日本のことを考えるのはやめ、現地での生活をいかに回していけるか集中するようにした。そうすれば少しはマシになる。違った環境の中ですべきことは、自分が変わる=自分のために何ができるか頭を使うこと、なのだ。

今まで何か国も住んでいても、現地生活にすぐ馴染めるわけではないし、新しい国に行くと苦労することは多い。でも、不便なことや悲惨なことがあっても自分で対策を考えれば改善できるし、そのことに集中すればたいしてほかのことはやり過ごせる。

 

こうして、私は悲惨だと思い込んでいたモルディブの生活だったが、娯楽のない生活の中で、なるべくたくさんの本を読み(本が読める時間はたっぷりあった)、シャワーが途中で止まっても、水をペットボトルに蓄えておけば非常時でも使うことができた。質素な暮らしでも、物欲を掻き立てるところもないので余計な出費がなくて済んだ。

1つの疑問

しかし、ここで考えてみる。

私は、夫の仕事の都合でいろんな国に住んできたが、自分で行きたい国に住んだわけではない。自分の好きな国に住むのだったら、もっと幸せだったのだろうか。

 

私の答えは、少し違っている。

 

まず、自分の知らない国は、興味がないか住みたくない国、という偏見になっていることだ。世界には素晴らしい国がたくさんあるのに、自分の知っているごくわずかな国だけがよく見えている。

私もはじめはそうだった。普通、いろんな国に住めるチャンスはそんなにあるとは限らないし、ひとまず行ける国だって決まっているからだ。その中で選ぶのだから、どうしても欧米やオーストラリア、韓国、近隣アジアなどメジャーな国になってしまう。

でも、先入観なしでとりあえず行ってみた国が、意外にもよくて好きな国になったりするのだ。いろんな国に住んで思うことは、どんな国にも「その国にしかないいいところ」が必ずある。そのよさを享受できるのはとても素晴らしい。なぜなら、その魅力は、その国を離れたら2度と経験できないからだ。私は、どこに住んでも、最後はそこが気に入ってしまい、離れがたくなる。

例えば、ドバイには、国際的な環境があって、いい加減だけどそのいい加減さが暮らしやすかったりするし、所得税がないからお給料はそのまま手取りだし(昔はVATもなかった)、世界一のプロジェクトや建造物を目の前にすることはそうそうできないし、イスラム国なのに自国と同じように暮しながら、おいしい中東のデイツとアラビックコーヒーを思う存分食べられるのは、ドバイ以外にはない。

ちなみに、ドバイの隣にオマーンという国があるが、同じアラビア半島、同じイスラム国だが、外国人はドバイほどいないし地形も違うし、イスラム色はもっと濃い。ドバイに住めば外国人にとっては暮らしやすいが、オマーンのようなゆったりとした雰囲気はない。

結局、その国が好きかどうかはもはや関係なく、海外生活の基本は、そこでしか経験できない付加価値に感謝しながら、少しでも生活が快適にように努力すればどんなところだって住めるということだ。

初心忘るべからず

今は、激寒のノルウェーにいるのだが、ドバイで50℃近くの灼熱地獄に暮らしから今度は-20℃以上。とんでもなく寒く、山の中なので何にもない。でも、ノルウェーの水はおいしいし、手つかずの雪景色は見たことないほど美しく、パウダースノー(粉雪)はきらっきらだし、夜空には星が流れている。

こんな光景は、人生で初めてだ。

別にこれを期待してノルウェーに来たわけではないのだけど、昨日まで知らなかった景色や光景が自分の価値観を変えるきっかけだとすると、海外生活も飽きないなあと思う。

初めて経験したモルディブの苦労は、私の心の中でいつも私を助けてくれる。海外移住にも「初心忘るべからず」がある。

知らない国だから、興味を持とう。

現地の生活を自分らしく変えよう。

そしたら、もっと人生が楽しくなる。

さいごに

私たちのようにいろんな国をあちこちしていると、そのたびに新しい文化の中で暮らさないといけないが、逆にどこの社会にも属さず外国人として生活していける気軽さもある。

しかし、自分の人生を生きるという意味では、多くの文化、現地の人々と出会ってその価値観を受け入れることで、たとえ問題が起こっても対応できるフレキシブルな態度や解決できる知恵をつけることができる。どのような海外移住であっても、それは自分のためにあり、豊かな人生を送ることができるチャンスだと思ってほしい。